最終回 ストックデザインズと夢を叶えよう
店の戸締りを済ませ、北へ300メートルほど進む。そこには広瀬川沿いの遊歩道があり、植えられた桜は見頃を迎えている。ただ、深夜のせいか周囲に花見客はいない。ベンチに腰をおろすと、身体中に疲れが広がった。今夜は忙しかったなあ。
地域活性化NPO法人 stock design'sのblog
第16回 教えてSNSマーケターさん
開店後しばらくは関係者が遊びに来てくれて賑わった。オープン景気だ。しかし3ヶ月も経過する頃には、お客さんの入りはまばらに。このままではいけない。でも何をしたらいいのか分からず、外を眺めていると人通りが少ないことに気がついた。たまに道を歩いているのは男性ばかりで、お目当てと思われるクラブにスッと入って行く。ハッと思った。通行人は目的があってこの街に来ている。店を開けていれば人が来てくれるわけではない。キチンと宣伝して、うちの店に来てくれるお客さんを増やさないといけない。ただ、お金はないし…。そういえば、後輩にSNSマーケティングの手練れがいたな。先輩としてカッコ悪い気もするけど、思い切って頼ってみよう。
マツシタ
こんにちは。単刀直入に申し上げて、集客に悩んでいます。先輩として情けないのですが、SNSに強いと評判の和田さんに助けを求めに来ました。お知恵を貸して下さい。
和田さん
もちろんです。
まずは、スモールビジネスの集客に関して簡単にお話しますね。
ポイントは3つあります。
まず①ですが、これが一番重要です。お酒の種類ですか?それと商品知識ですか?お店の雰囲気ですか?会話も含めたマツシタさんのセンスですか?ここをはっきりしないと、何が売りの店だか分からず、お客さんの興味をひけません。
続いて②です。開店から3ヶ月以上が経過してお客様のニーズがなんとなく見えてきたと思います。そこからお店の強みを見つけましょう。
最後に③ですが、店舗集客の定石は、a 写真メインでコンテツが分かりやすいインスタグラムで新規顧客にリーチ→b 集客→c LINE友達でコミュニティをつくり、ファン化を目指すーです。まずはインスタグラムを頑張りましょう。
第15回 教えて信用金庫さん!
ようやく、お店のオープンに漕ぎつけた。お洒落な店内を眺め、根岸代表と一緒にDIYを頑張った日々を思い出す。先輩バーオーナーのトモジさんにも随分とお世話になった。家族も見守ってくれた。関わった人達への感謝の気持ちが溢れる。そうだ、みんなをお店に招いて、お礼をしよう。
プレオープン当日、皆に喜んでもらおうと張り切った。準備は万端のつもりだった。しかし、業務を回す上で足りないものが多くあることに気がついた。提供スピードを上げるためにはグラスやお皿の数が少ない。コートをかけるハンガーがない。などなど。正式オープンするまでに必要なものを買い足さないと。
翌日、お金を下ろして買い物に出かけようとすると、口座の残高が随分と減っていることに気がついた。思い切って仕入れた商品がお金になるのは売り上げた後のこと。ワインセラー、スピーカーも予定より高いものを購入してしまった。食器類を増やすとなると棚も追加で必要。今後もお金が出ていくだろう。カードの支払いもある。オープン早々、お金の不安が。どうしよう。困った時は根岸代表だ。
根岸代表「無事にオープンできてよかったね。この間はご馳走さま」
マツシタ「とんでもないよ。いいお店を作ってくれてありがとう。ところで今日電話したのは資金繰りが不安で」
根岸代表「開店、当初は結構出ていくよ。会社と違って、お金の管理は自分でしないと。そうは言ってもマツシタは細かい作業が苦手か。俺の知り合いの信金マンを紹介するから、よく話を聞くといいよ。」
第14回 マーケティング
以前、話を聞かせてもらったBARオーナーのトモジさんと話し合う中で、マツシタのお店はワインバーにすることに決めた。出店先の周辺に手軽なワイン専門のバーがないことが理由だ。
いろいろなコネを活かしてワインの仕入れ先は決まった。都内のワインに詳しい方が経営している某酒販店。店主さんはワイン愛がすごい方で、熱心にマツシタの相談にのってくれる。トークも面白い。いい仕入れ先に出会えたと気分が上がった。
ところが到着したワインを眺め、頭を悩ませてしまった。お店で提供するワインの値段ってどう決めればいいのだろう?参考にできるワインバーは近くにないし、バーで提供するワインを居酒屋さんと同じ値段で出すのでは赤字になってしまう。かといって高くてはお客さんが来てくれない。困った時は関連する書籍を数冊読む。本業ではそうやって新しい課題に取り組んできた。今回も乗り切れるはずと気合を入れた。
第11回 マツシタの店舗づくり 初めてのDIY(下)
工事に参加して3ヶ月。自分はDIYを好きかもしれないとふと思う。作業以外のことは考えない時間を過ごすことや、目に見える形で進捗が分かることがメンタルにいい影響を与える。DIYを趣味にする人が大勢いるのも頷ける。
自分が受け持った終盤の主な作業はヤスリによるカウンターの仕上げと漆喰塗り。カウンターはBARの主役「お酒」のステージだから、心を込める。200番で磨いて油性クリアーのニスをひと塗り。続いては400番のヤスリで磨いて同様に塗る。合計4回もニスを塗る根気のいる作業だが、回数を重ねるごとに光沢がでてき、木目が綺麗に浮かび上がる。
この企画は、群馬県に住むサラリーマンのマツシタが、NPO法人ストックデザインズの協力を得ながら飲食店を開業するまでの物語である。
第9回 マツシタの店舗づくり 初めてのDIY(上)
今日、初めて物件を見学する。待ち合わせの時間を逆算すると、まだゆっくりしていてもいい時間だが、自宅を出てしまう。40も半ばを過ぎてこんなにワクワクできるなんて、自分はいい選択をしたと思う。目的地近くのパーキングに車を止め、時計に目をやると午前9時40分。根岸との待ち合わせまであと20分もある。
物件の近くを散策する。近くには町中華、キャバクラ、寿司屋、焼鳥屋。川が流れている。物件に戻ると、根岸がちょうど鍵を開けているところだった。